1966年
159.0cm X 231.0cm
今治市大三島美術館蔵
取材地:東京・江戸川河原

1966 Water.jpg

私は大学院在学中の2年間、出品した公募展にことごとく落選して、すっかり自信を無くしていました。修了制作に何を描いたらいいのかわからなくて、気分転換に写生旅行をしようと思い、母に旅費を無心しましたが、母は旅行などしなくても、どこでも絵になるはずだといって、費用を出してくれませんでした。
しかたなく、当時住んでいた小岩の家の近くを流れる江戸川でも描こうかと、夜の明ける前に自転車で出掛けました。
土手からスケッチブックを懐中電灯で照らしながら、次第に明るくなっていく江戸川の川面を描いていると、急に手前の川原がざわめくように少しずつ形を現し、見慣れていた江戸川が、今まで見たこと無い姿に一変したのです。
あっという間に日は昇り、再び見慣れた江戸川になってしまいましたが、その時、私には一枚の絵が出来上がっていました。
この絵は同級生とのグループ展に出品したもので、その後、同じテーマで描いた修了制作が学校買い上げになり、少し絵を描く自信が付いてきました。
どこでも絵になるということを、母に学んだような気がしました。